若い頃から事務業務で経験を積む毎日
Sさんは若い頃から、データ入力や伝票仕訳・売掛買掛管理・入金管理など一般事務や経理業務の仕事に携わっていました。このほか倉庫内でのピッキング作業や箱詰め作業などの軽作業まで、転職や派遣契約で働きながら色々な仕事を経験してきました。
どの職場でも「正確な処理」「納期厳守」にこだわって業務に取り組み、仕事に対しての責任感をとても強くお持ちの方でした。
不眠症状からうつ病・社会不安障害などの発症
幼少期から人を前にすると過度に緊張をしてしまう傾向があったSさんは、今から4年程前、不眠症状からうつ病と社会不安障害の診断を受けました。更にその2年後、職場での人間関係のストレスをきっかけに精神不安定となり入院、統合失調症と診断されました。
数か月の療養を経て退院後は、引き続き体調を安定させる為の数年に及ぶ長い治療と離職期間が始まりました。
ひとりで就職活動を始めるも不採用の日々
当時は被害妄想や不眠の症状が強く、不安定な精神状態に悩まされる日々でしたが、主治医の指導の下で服薬と定期通院を続けることで次第に体調も安定していきました。
そして主治医から勤務可能との意見をもらうと障害者手帳を取得し、「次こそは心穏やかに働ける場所で長期就業を!」と心に決め、ハローワークに通いながら一般求人と障害者枠求人の両方で事務職を中心に就職活動を開始しました。
しかし結果は、書類選考で落とされてばかり。
たまに面接に進めても、生来のあがり症に加え、服薬による副作用で手足の動作や会話のテンポが人よりも遅く、思うような自分のアピールができず不採用の連続でした。
ヒューマングローとの出会い
そんな辛い日々の中、利用していた訪問看護の看護師さんから紹介されたのが「ヒューマングロー」でした。
「就職を目指して親身にサポートしてもらえる」サービス内容にとても興味を持ったとのことで、最初はお試し体験からスタートしました。
念入りに3週間近く体験した上で、「落ち着いた静かな訓練環境」「豊富な訓練プログラム」「穏やかで経験豊富なスタッフ陣」に魅力を感じ、正式に利用することになりました。
ヒューマングローの就労移行支援を利用する中で取り組んだこと
通所が始まり、すぐにSさんと一緒に取り組んだことは、
・症状を悪化させない為に必要な条件を整理すること
・障害のある今の自分にできること(得意なこと)/できないこと(苦手なこと)を明確にして整理すること
・その上で、今の就職市場の中での自身の「位置」を、客観的な目線で確認して受け入れること
・長く安定して就業できるための「働き方」をできるだけ具体的にイメージすること
・応募書類をいちから見直すこと、などでした。
その結果、Sさんに見えてきたことは、
・身体に負担なく安定して長く働ける仕事であれば、事務でも軽作業でも、業務内容にこだわりはない
・「人間関係の円満な就業環境」や、薬の副作用により手足の動作や会話がゆっくりであることを踏まえ、「時間に余裕をもって取り組める仕事」が自分に向いている
・障害を発症後の自分の強みは「スピード」ではなく「仕事の丁寧さ」にある
・応募書類の内容が薄く、とても分かりずらい
という4点でした。
自己分析を基に、履歴書や職務経歴書、面接の振る舞い方などを改善
その4つを発見してから、Sさんは早速「読み手がわかりやすい応募書類」を心掛けて、履歴書や職務経歴書を書類を最初から作り直しました。
そして、見直した希望条件を元に、それまでは検討することのなかった業界や職種も含め、1件1件、丁寧に探し出し、応募していくこと繰り返していきました。
また、あがり症で面接が大の苦手だったSさんは、あがり症である”弱み”を”強み”に替えるアピール方法を繰り返し練習した他、模擬面接で自身の姿を写真や動画を使って客観的に確認することで、徹底して「Sさんの誠実さや真面目さができるだけ面接官に伝わる面接」を目指しました。
Sさんは後日、この頃を振り返り「ヒューマングローに通う前は、どうしたら書類選考が通過できるか、どうしたら面接を通過できるかを何も考えず、ただ漫然と、ただ手あたり次第に、やみくもに求人に応募をしていました。けれどヒューマングローでスタッフさんのサポートを受けるようになって、就職活動への取り組み方がまるっきり変わりました」と語っていました。
思いを企業に粘り強く伝え、相談することで巡り合えた理想の仕事
就職活動を始めて2ヵ月余り。何社目かに受けた面接は、保育園での清掃のお仕事でした。
事務経験が直接活かせる職種ではありませんでしたが、子育てや家事の経験が活かせて、小さな子供の大好きなSさんには、それまで自分では気付かなかった理想の職種でした。
書類選考通過の連絡を企業からいただき、Sさんの入社への意向もとても高くなりました。
しかし、一次面接にスタッフも同席して詳しく業務説明を伺うと、実は今回の募集拠点は企業が運営する多数の保育園の中でも特に大規模な園とのこと。建物が大きい分清掃する範囲も広く、時間的にも体力的にもハードである事がわかりました。
このままでは残念ながら、Sさんの希望する条件や働き方とは大きく異なります。
面接内での面接官の反応も、明らかに体力面に不安を感じている様子で、不合格の連絡が届くのは時間の問題と思われました。
そこで面接後、Sさんとスタッフは、その企業のホームページで拠点一覧の中から他の保育園でSさんの通勤可能圏内にある小規模の園を探しだし、改めてスタッフから企業に新しい保育園での採用検討をお願いしました。
Sさんの懸念とその理由、そして仕事への熱意を細かくお伝えしたところ、企業側ではSさんの誠実な人柄や、障害受容がしっかりとできている事への評価が高く、採用を再検討していただく形になりました。
その後、1週間実習に参加し、最終日の実習終了後にその場で合格、採用内定を伝えていただけました。
Sさんの諦めない思いが、見事に実を結んだ、嬉しい瞬間でした!
自信をもって就職活動に取り組めるようになった
「3年余りの間、ひとりで就職活動をしていた頃は、年齢が高い上に病気の診断も受け、もう二度と就職できないかもと、自信が持てず気が重い日々でした。
それが、ヒューマングローに通うようになり、いろいろな訓練プログラムに参加するおかげで自分の障害にきちんと向き合う事ができるようになりました。
就職活動も、求人情報から書類作成・面接練習まで的確なサポートを受けられたおかげで自信を持って取り組めるようになり、それから仕事が決まるまではあっという間でした 。
ヒューマングローに通えて本当に良かったです!」
今も活き活きと楽しそうに勤務されているSさん。
現在一ヵ月に一回のペースで「入社後フォロー面談」を行っており、お会いすると毎回、楽しそうに保育園で仕事の様子や園児のエピソードを話してくれます。
ヒューマングローでは、就職に向けてのサポートだけでなく、お仕事が決まった後も、みなさんが末永く安心して働いていけるようサポートをしてまいります。
各障害・疾患別の就職支援事例はこちら